2006年 09月 12日
黒姫の喫茶店 |
夏も終わりかけ。ちょっと遠出をしようと先日黒姫高原へいってきた。黒姫高原は長野駅から電車で30分、それからバスで15分のところにあって、今の時期はコスモスが満開!視界のぎりぎりのところまで淡い色彩のコスモス畑が広がっていた。高原から歩いて10分のところには黒姫童話館というところがあって、そこではミヒャエル・エンデの直筆の原稿や、絵画をみることができる。『果てしない物語』の冒頭にでてくるコレアンダー書店の想像図を見たときは、初めて『果てしない物語』を手にしたときの興奮が蘇ってきてしばらく小学校時代へトリップ。でも、この小さな遠出で一番印象に残ったのは、黒姫高原でも黒姫童話館でもなく、黒姫駅。以下は、黒姫高原につくまでの2時間弱の話。
黒姫駅はあまりにもこじんまりしていた。まず電車を降りると私しか居ない。駅の前にある建物は、お土産やさんが二軒と、喫茶店が一軒、それからバス停と小さな観光案内所。どれもまるでひとけがない。バス停に止まっているバスも明らかに廃バスで、物置と化している。ここは観光地じゃないのかい?激しく不安に襲われて観光案内所に向かうと、中から眠そうなおじさんがでてきて「バスはあと一時間後だよ」と答えてまたうとうとしてしまった。時間泥棒に時間を盗まれてしまったに違いない!観光案内所の壁に「黒姫童話館〜ミヒャエル・エンデの世界〜」と書かれた色あせたポスターがをみて確信した。
時間を潰すために駅での唯一の喫茶店に入る。そこで私は始めてひとらしいひとを見つけることができた。入り口こそは地味だけど、中は薄暗くて、テーブルが大きくて、固いソファのある安心感のある喫茶店。その奥で店員らしきお兄さんが、常連らしきおじさんと話しをしていた。コココアを頼んで本を開くも、今は人の声が聞いていたい。自然と会話に耳がいく。おじさんはレバノンのニュースを見ながら、「神様が一番なんだろーなー考えられねぇけどよぉー金もいらねーメシもいらねーってんだからさー」「それにくらべりゃちゃっかりしてるよね、ユダヤ教は」と話し、それに店員さんが「うん」「そうだね」とテンポよく相づちをうっていく。戦争の話題を聞きながらリラックスするのも変だけど、肩に入った余計な力が抜けていくのがわかる。
するとそこに店の店主らしきおばさんが帰ってきて、お兄さんと店番を交代。おばさんはテレビを見上げ、「この時の秀吉ってのはすごいもんだね」とおじさんに話題をふる。張りのあるつややかな声。テレビはいつの間にか大河ドラマに変わっていた。今度はおじさんが聞き手のよう。おばさんは続けて話しだす。「仕入れたばっかの知識で我ながら恥ずかしいんだけどねーこのね、こいつと結婚できなかった天皇の息子、あれが桂離宮を作ったらしいんだ」「大阪城もさ、すごいよね。でもあれ作るのに何人死んでんだろうね。石なんてさ、重いでしょうに。」おばさんの会話はおじさんとはちょっと違っていて、話しのあとに視点の変わったコメントがつくから面白い。茨木のり子さんの『大学をでたお嬢さん』という詩を思い出す。「大学を出た奥さん 智識はぴかぴかのステンレス 赤ん坊のおしめ取り替えながら ジュネを語る 塩の小壺に学名を貼る ピイピイ 」てやつ。
しばらくすると作業着を着たおじさんが入ってくる。「いつもの」を頼んで、ちょっと変わった形のテーブルにつく。よく見るとインベーダーゲーム!仕事帰りにこの喫茶店によってインベーダーゲームをやるのが息抜き、といった感じなのかしら。鼻歌を歌いながら器用に操作する。おじさんもおばさんも移動してゲーム観戦。「惜しい!」「ここが難しいんだ!」とそうとう白熱している。そういえば、インベーダーゲームって初めてみたかも。気付いたら私も一緒に覗き込んでいる。た、たのしい。
一時間をとうに経過したころ、外からバスのエンジンの音が。結局、観光客らしき乗客は私だけだったけれど、すっかり不安は消えていた。そして15分後、無事黒姫高原に到着したのだった。
というわけで、思い返してみたら黒姫高原よりも、黒姫駅で過ごした二時間が妙に印象に残ってしまった。でもそうかんがえると黒姫駅って、時間の音がよく聞こえる場所なのかも。じゃあコスモスは時間の花?久しぶりに『モモ』でも読み返してみよう。
写真は黒姫童話館の芝生
黒姫駅はあまりにもこじんまりしていた。まず電車を降りると私しか居ない。駅の前にある建物は、お土産やさんが二軒と、喫茶店が一軒、それからバス停と小さな観光案内所。どれもまるでひとけがない。バス停に止まっているバスも明らかに廃バスで、物置と化している。ここは観光地じゃないのかい?激しく不安に襲われて観光案内所に向かうと、中から眠そうなおじさんがでてきて「バスはあと一時間後だよ」と答えてまたうとうとしてしまった。時間泥棒に時間を盗まれてしまったに違いない!観光案内所の壁に「黒姫童話館〜ミヒャエル・エンデの世界〜」と書かれた色あせたポスターがをみて確信した。
時間を潰すために駅での唯一の喫茶店に入る。そこで私は始めてひとらしいひとを見つけることができた。入り口こそは地味だけど、中は薄暗くて、テーブルが大きくて、固いソファのある安心感のある喫茶店。その奥で店員らしきお兄さんが、常連らしきおじさんと話しをしていた。コココアを頼んで本を開くも、今は人の声が聞いていたい。自然と会話に耳がいく。おじさんはレバノンのニュースを見ながら、「神様が一番なんだろーなー考えられねぇけどよぉー金もいらねーメシもいらねーってんだからさー」「それにくらべりゃちゃっかりしてるよね、ユダヤ教は」と話し、それに店員さんが「うん」「そうだね」とテンポよく相づちをうっていく。戦争の話題を聞きながらリラックスするのも変だけど、肩に入った余計な力が抜けていくのがわかる。
するとそこに店の店主らしきおばさんが帰ってきて、お兄さんと店番を交代。おばさんはテレビを見上げ、「この時の秀吉ってのはすごいもんだね」とおじさんに話題をふる。張りのあるつややかな声。テレビはいつの間にか大河ドラマに変わっていた。今度はおじさんが聞き手のよう。おばさんは続けて話しだす。「仕入れたばっかの知識で我ながら恥ずかしいんだけどねーこのね、こいつと結婚できなかった天皇の息子、あれが桂離宮を作ったらしいんだ」「大阪城もさ、すごいよね。でもあれ作るのに何人死んでんだろうね。石なんてさ、重いでしょうに。」おばさんの会話はおじさんとはちょっと違っていて、話しのあとに視点の変わったコメントがつくから面白い。茨木のり子さんの『大学をでたお嬢さん』という詩を思い出す。「大学を出た奥さん 智識はぴかぴかのステンレス 赤ん坊のおしめ取り替えながら ジュネを語る 塩の小壺に学名を貼る ピイピイ 」てやつ。
しばらくすると作業着を着たおじさんが入ってくる。「いつもの」を頼んで、ちょっと変わった形のテーブルにつく。よく見るとインベーダーゲーム!仕事帰りにこの喫茶店によってインベーダーゲームをやるのが息抜き、といった感じなのかしら。鼻歌を歌いながら器用に操作する。おじさんもおばさんも移動してゲーム観戦。「惜しい!」「ここが難しいんだ!」とそうとう白熱している。そういえば、インベーダーゲームって初めてみたかも。気付いたら私も一緒に覗き込んでいる。た、たのしい。
一時間をとうに経過したころ、外からバスのエンジンの音が。結局、観光客らしき乗客は私だけだったけれど、すっかり不安は消えていた。そして15分後、無事黒姫高原に到着したのだった。
というわけで、思い返してみたら黒姫高原よりも、黒姫駅で過ごした二時間が妙に印象に残ってしまった。でもそうかんがえると黒姫駅って、時間の音がよく聞こえる場所なのかも。じゃあコスモスは時間の花?久しぶりに『モモ』でも読み返してみよう。
写真は黒姫童話館の芝生
by spacing03
| 2006-09-12 00:51
| †たのしい雑記